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東京地方裁判所 平成元年(ワ)12638号 判決

原告(反訴被告)

甲野一郎

被告

乙川春子

右訴訟代理人弁護士

丙沢二郎

被告(反訴原告)

丙沢二郎

主文

一  被告乙川春子及び被告(反訴原告)丙沢二郎は原告に対し、各自金三〇万円及びこれに対する平成元年一〇月一二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告(反訴被告)のその余の請求を棄却する。

三  被告(反訴原告)丙沢二郎の反訴請求を棄却する。

四  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを五分し、その一を原告(反訴被告)の、その一を被告乙川春子の、その三を被告(反訴原告)丙沢二郎の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一原告(反訴被告。以下、原告という)

被告乙川春子(以下、被告乙川という)及び被告(反訴原告)丙沢二郎(以下、被告丙沢という)は原告に対し、各自金一五〇万円及びこれに対する平成元年一〇月一二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二被告丙沢

原告は被告丙沢に対し、金一五〇万円及びこれに対する平成元年一〇月一三日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一争いのない事実及び証拠によって認定した事実

1  被告乙川は丁海三郎に対し、医療過誤(二重瞼修正手術の失敗)を理由に損害賠償の訴訟を提起した〔東京地方裁判所昭和六二年(ワ)第二六五四号事件。以下、第一事件という〕。(争いがない)

2  右第一事件において、被告乙川は、外貌の醜状、瞼の運動障害、視野の狭窄及び視力の低下、神経系統及び精神の障害等の後遺症があるとして、慰藉料と営業活動低下による逸失利益を理由に約三〇〇〇万円の損害賠償の請求をした。(争いがない)

原告は、丁海三郎の訴訟代理人となったが、被告乙川の後遺症が現実に存在するのかということと被告乙川が後遺症のため減収となったのかということについて調査をする必要があると考え、丁海三郎の了解を得て磯部調査事務所に右の点についての調査を依頼し、磯部調査事務所は原告の身辺調査をしたうえ別紙一及び二のとおりの調査報告書(〈書証番号略〉。以下、本件一及び二調査報告書という)のほか、被告乙川の結婚相手が韓国人である等被告乙川のプライバシーに深く係わる調査報告書一通(以下、本件三調査報告書という)を作成した(〈書証番号略〉)。

3  原告は昭和六三年一〇月七日の第一事件の和解期日において担当裁判官に和解の資料として本件一ないし三調査報告書を提出したところ、担当裁判官は被告乙川の代理人であった被告丙沢に対し右各調査報告書を示した。その後原告は昭和六三年一一月一八日の第一事件の口頭弁論期日において本件一及び二調査報告書を書証として提出した(〈書証番号略〉、弁論の全趣旨)。

4  これに対し、被告乙川及び被告丙沢は、第一事件において「原告は倫理感が完全に麻痺し、事の是非、善悪の判別もできない。弁護士であれば何をしてもかまわないという特権的な思い上がった意識、観念に取りつかれている。まともな主張立証ができない場合は、相手方に対して名誉毀損、恐喝を常套手段として使用していることが推測される。このような悖徳の徒が法曹の間に紛れて存在していることは不思議である。原告の回答は明白に原告が精神異常であることを示す。品性は低劣、行為は卑劣」との記載がある被告乙川第七回準備書面(以下、本件準備書面という)を裁判所に提出している(〈書証番号略〉、弁論の全趣旨)。

5  また、被告乙川は、「本件一ないし三調査報告書の内容は、第一事件とは全く関連のないものであって、原告が被告乙川の身辺調査を磯部調査事務所に依頼し、また原告が被告乙川の代理人であった被告丙沢に対し本件一ないし三報告書を示して話し合いを求め、さらに、本件一及び二調査報告書を証拠として提出したのは、不法行為(恐喝、名誉毀損)にあたるとして損害賠償の訴訟を提起した〔東京地方裁判所平成元年(ワ)第六一三号事件。以下第二事件という。なお、同事件の被告乙川の訴訟代理人も被告丙沢である〕が、同事件においても、被告乙川及び被告丙沢は本件準備書面を書証として提出している(〈書証番号略〉、弁論の全趣旨)。

二原告の主張

原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一及び二調査報告書を証拠として提出したのは、正当な弁論活動の一貫としてなされたものであって、恐喝、名誉毀損にあたるものではないにもかかわらず、被告乙川及び被告丙沢が第一事件において本件準備書面を提出し、第二事件において同準備書面を書証として提出したのは、原告の名誉を著しく毀損するものである。右は正当な弁論活動の範囲を著しく逸脱するものであるから、不法行為が成立する。

三被告乙川及び被告丙沢の主張

原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一及び二調査報告書を証拠として提出したことは、恐喝、名誉毀損に該当するものであって、本件準備書面は右原告の犯罪行為に対する被告乙川及び被告丙沢の抗議に原告が被告乙川及び被告丙沢を誹謗したことから誘発されたものである。原告の常習的かつ執拗な加害行為に対する必要やむをえない正当防衛行為である。

四被告丙沢の主張(反訴関係)

1  被告丙沢は原告に対し、昭和六三年一〇月一四日頃、電話で原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一ないし三調査報告書を提出したことを抗議したところ、原告は「このような行為は違法でも不当でもなく、弁護士には当然許されているものである。弁護士のこのような行為に対して抗議することがむしろ不当である。このことに抗議する被告丙沢は異常であっておかしい」と答えて被告丙沢の第一事件における被告乙川のための弁論を阻害した。

2  原告は、昭和六三年一一月二八日、第一事件の口頭弁論において、被告丙沢、被告乙川及び傍聴人の前で、「このようなことを問題とする弁護士は頭がおかしくて異常である」と述べ、被告丙沢の名誉及び信用を著しく毀損した。

3  原告は、平成元年八月三一日、第二事件の口頭弁論において、「被告乙川及び被告丙沢は丁海三郎の新たな調査行為を阻止し、調査結果の追加提出を阻止しようとしている」旨の記載のある準備書面を陳述した。

4  原告は、本訴において、被告らの訴訟活動が不法行為である旨主張している。

5  原告は、平成元年八月三一日、第二事件の証人尋問期日において、「今回このような事件(第二事件)にまで発展したのは、被告丙沢が非常に特別に異常(異常に特異)であり、また被告丙沢の弁護士経験が短いためである。磯部調査事務所の所長が『非常に特殊な弁護士である被告丙沢が来て迷惑している。今まではこういうことはなかった』旨述べていた。被告丙沢は興奮すると民事第二五部の裁判官が三人揃っても法廷の混乱を治めることができないほど非常識、狂暴である」旨供述した。

6  右はいずれも被告丙沢に対する名誉毀損であって、不法行為にあたる。その精神的な損害を慰藉するには金一五〇万円をもってするのが相当である。

第三判断

一まず、本訴につき検討する。

1 そもそも、民事訴訟においては、当事者が十分に主張立証をつくすことによってその目的を達すべきものであるから、訴訟における主張立証行為の中に相手方やその代理人の名誉を毀損するような行為があっても、それが訴訟における正当な弁論活動と認められる限り、違法性を阻却されるというべきである。もっとも、当初から相手方当事者の名誉を害する意図でことさら虚偽の事実や当該事件となんら関連性のない事実を主張する場合や、主張の表現内容、方法、主張の態様が著しく適切さを欠く非常識なもので相手方の名誉を著しく害するものなど、社会的に許容される範囲を逸脱するものは、正当な弁論活動とはいえず、違法性を阻却されないというべきである。

2 これを本件についてみるに、被告らが第一事件の口頭弁論期日において、「原告は倫理感が完全に麻痺し、事の是非、善悪の判別もできない。弁護士であれば何をしてもかまわないという特権的な思い上がった意識、観念に取りつかれている。まともな主張立証ができない場合は、相手方に対して名誉毀損、恐喝を常套手段として使用していることが推測される。このような悖徳の徒が法曹の間に紛れて存在していることは不思議である。原告の回答は明白に原告が精神異常であることを示す。品性は低劣、行為は卑劣」との記載のある本件準備書面を陳述し、また、同準備書面を第二事件の書証として提出したことは著しく適切さを欠く常識を逸脱し、原告の名誉を著しく害するものであって、社会的に許容される範囲を逸脱するものであるので、正当な弁論活動とはいえないというべきである。

なお、被告らは、「原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一及び二調査報告書を証拠として提出したことは、恐喝、名誉毀損に該当するものであって、本件準備書面は右原告の犯罪行為に対する被告乙川及び被告丙沢の抗議に原告が被告乙川及び被告丙沢を誹謗したことから誘発されたものである原告の常習的かつ執拗な加害行為に対する必要やむをえない正当防衛行為である」旨主張するが、被告乙川が第二事件において、本件準備書面の内容、方法、態様によらなければ、その主張する目的を達することができないものとは到底いえないのみならず、後記のとおり原告の弁論活動は正当なものであるので、正当防衛行為とは認められず、被告らの右主張は採用できない。

3 そうとすれば、被告らは右違法行為による責任を免れることはできないというべきである。

4 原告が被告らの右名誉毀損により受けた精神的損害を慰藉するには金三〇万円が相当である。

二次に、反訴につき検討する。

1  被告丙沢の主張1については、「被告丙沢が原告に対し、昭和六三年一〇月一四日頃、電話で原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一ないし三調査報告書を第一事件の和解期日に提出したことを抗議したところ、原告は『このような行為は違法でも不当でもなく、弁護士には当然許されているものである。弁護士のこのような行為に対して抗議することがむしろ不当であるこのことに抗議する被告丙沢は特異である』と答えた」ことが認められる(弁論の全趣旨)。

2  被告丙沢の主張2の「原告が、昭和六三年一一月二八日、第一事件の口頭弁論において、被告丙沢、被告乙川、傍聴人の前で、『このようなことを問題とする弁護士は頭がおかしくて異常である』と述べた」事実を認めるに足る証拠はない。

3  被告丙沢の主張3の「原告が、平成元年八月三一日、第二事件の口頭弁論において、『被告乙川及び被告丙沢は、第一事件において、丁海三郎の新たな調査行為及び調査結果の追加提出を阻止しようとして、第二事件を提起しまた、第一事件において本件準備書面を陳述している』旨の記載のある準備書面を陳述した」ことは認められる(〈書証番号略〉)。

3  被告丙沢の主張4については、「原告が本訴において、被告らの訴訟活動が不法行為である旨主張している」ことは当裁判所に顕著である。

4  被告丙沢の主張5についは、原告が、平成元年八月三一日、第二事件の証人尋問期日において、「和解のときに本件一ないし三調査報告書を見せたのは、直接法廷等で出すと、依頼者がその弁護士に対しても自分の不利なことを言わない場合もあるし、訴訟がこじれる場合もあるので、和解の席で裁判官の判断で提示してもらうことが最良だと思ったし、また、被告乙川の代理人である被告丙沢の態度がわからなかったのでそれを打診する意味で裁判官にお願いしました。それに、第一事件では慰藉料を一〇〇〇万円位、逸失利益を二〇〇〇万円位請求されているのですが、そのような後遺症は存在しないと思いますし、被告乙川は休みなしに毎日店で働いていると言っているので、手術の結果損害が発生していないということと、本件一ないし三調査報告書があるので、配慮のうえ、和解案を裁判官から提示してもらいたいという趣旨もありました。…原告代理人は調査報告書を見た段階で激怒しその結果和解は打切りになりました。原告代理人がどういう点に激怒したのか具体的には聞いていません。…和解が打切りになった後、本件一及び二調査報告書は証拠として出しました。その他裏付けの調査報告書がありますが証拠として提出していません。それは、これまでの被告丙沢の言動から調査の取材先に圧力をかけるおそれがあったこと、通常なら調査報告書に対していくらでも反証を出せるし、それが民事訴訟の基本であるのに、いろいろな非難や中傷を受け、訴訟まで提起されたので、これ以上出す必要はないと考えたこと、磯部調査事務所から、被告乙川からしつこく抗議があったし被告丙沢からも言われており、これ以上関わり合いになりたくないので、今後調査報告書の提出は見合わせて欲しいという要請が来たからです。…私は、被告乙川の名誉を毀損したり、侮辱したり、恐喝したという意図はありません。ただ、刑法上の構成要件に該当する事項があるかもしれないということは承知していましたが、…裁判所の訴訟指揮の中でなした弁護活動は、形式的に刑法上の構成要件に該当しても、正当行為であれば違法性が阻却されると理解しています。第一事件が特殊なケースであることと、被告丙沢が非常に特異な先生であることを銘記していただきたいと思います。特異性についは、被告丙沢が提出した準備書面を見ればわかると思います。裁判所の和解の席で、今までの慣例上行ってきたことが、このような事件(第二事件)にまで発展したのも通常では考えられません。こうなった原因の一つには、被告丙沢が当時弁護士になって四、五年であったということで、場合によっては調査事務所の信用性をよく知らなかったからではないかと思います」と供述し、さらに被告丙沢の「調査事務所の所長はこれらのこと(本件一ないし三調査報告書の内容)のことは又聞きであって私には責任がありませんと私に言っているし、テープが入っていますね」との質問に対し、「私は磯部調査事務所の所長から『非常に特殊な弁護士が来て、いままでこういうことがないのに迷惑しているから、後の書類は提出しないでください』と懇願され、私もいろいろ御世話になっていますし、本件がこれ以上発展してもいけないので提出しませんでした」と答え、さらに被告丙沢の「第一事件の担当裁判官は第三報告書は不要だとはっきり私に言いましたが、その点どうですか。何故提出しないのですか」との質問に対し、「そんなことはありません。先生のいるところで弁明すると、興奮して法廷が混乱するので先生がいないときにその事情は裁判所に明確に弁明しています」と答えていることは認められる(〈書証番号略〉)。なお、原告が右証人尋問期日に「被告丙沢は興奮すると民事第二五部の裁判官が三人揃っても法廷の混乱を治めることができないほど非常識、凶暴である」旨供述したことを認めるに足る証拠はない。

5  そこで、まず、「原告が本訴において、被告らの訴訟活動が不法行為である旨主張している」ことが不法行為にあたるか否かにつき検討するに、第三の一で説示したとおり、本訴自体が理由あるので、「原告が本訴において、被告らの訴訟活動が不法行為である旨主張している」ことは何ら不法行為とならないことは明白である。

6  次に、「原告が、平成元年八月三一日、第二事件の口頭弁論において、『被告乙川及び被告丙沢は、第一事件において、丁海三郎の新たな調査行為及び調査結果の追加提出を阻止しようとして、第二事件を提起し、また、第一事件において本件準備書面を陳述している』旨の記載のある準備書面を陳述した」ことが不法行為にあたるか否かにつき検討するに、後記のとおり、第一事件における原告の弁護活動は正当なものであるというべきであるから、原告が被告らの第二事件の提起及び第一事件における本件準備書面の陳述をもって、被告らが第一事件において、丁海三郎の新たな調査行為及び調査結果の追加提出を阻止しようとしたと考え、その旨主張したとしても、何ら違法なものではないというべきである。

7  さらに、被告丙沢が原告に対し、昭和六三年一〇月一四日頃、電話で原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一ないし三調査報告書を提出したことを抗議したところ、原告は「このような行為は違法でも不当でもなく、弁護士には当然許されているものである。弁護士のこのような行為に対して抗議することがむしろ不当である。このことに抗議する被告丙沢は特異である」と答えたことが不法行為にあたるか否かにつき検討する。

原告は、被告乙川の後遺症が現実に存在するのかということと被告乙川が後遺症のため減収となったのかということにいて調査をする必要があると考え、磯部調査事務所に右の点についての調査を依頼し、磯部調査事務所は原告の身辺調査をしたうえ本件一ないし三調査報告書を作成したというものであって、その調査の目的は被告乙川のプライバシーの調査だけが目的ではなかったこと(前記第二の一2で説示)、その調査の態様も被告乙川が経営する飲食店で飲食しながら資料の収集をしたり、戸外での被告乙川の動静を調べたというものであること(〈書証番号略〉)、本件一ないし三調査報告書の内容には被告乙川のプライバシーに係わるものがあったが、丁海三郎の反証ないし補助事実の証明に不可分のものであること、本件三調査報告書には被告乙川の結婚相手が韓国人である等第一事件と関連のない被告乙川のプライバシーに係わるものもあったが、同調査報告書は、和解の席で提示されたにとどまっていること(〈書証番号略〉)からすれば、原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一ないし三調査報告書を和解期日に提出したことは弁護活動として正当なものであるというべきであり、原告が被告丙沢の抗議に対し、「このような行為は違法でも不当でもなく、弁護士には当然許されているものである。弁護士のこのような行為に対して抗議することがむしろ不当である」旨答えたとしても何ら違法ではない。また、そのような抗議をした被告丙沢を通常の弁護士とかなり異なった弁護士であるという意味で「弁護士として特異である」旨述べたとしても何ら名誉を毀損するものではなく、被告丙沢を侮辱するものとはいえない。

8  進んで、原告が、平成元年八月三一日、第二事件の証人尋問期日において「被告丙沢が非常に特異な先生であることを銘記していただきたいと思います。特異性については、被告丙沢が提出した準備書面を見ればわかると思います。裁判所の和解の席で、今までの慣例上行ってきたことが、このような事件(第二事件)にまで発展したのも通常では考えられません。こうなった原因の一つには、被告丙沢が当時弁護士になって四、五年であったということで、場合によっては調査事務所の信用性をよく知らなかったからではないかと思います。私は磯部調査事務所の所長から『非常に特殊な弁護士が来ていままでこういうことがないのに迷惑しているから、後の書類は提出しないでください』と懇願された」旨供述したことが不法行為にあたるか否かにつき検討するに、前記のとおり被告丙沢が第一事件の口頭弁論期日において本件準備書面を陳述し、第二事件において右準備書面を書証として提出したことは不法行為にあたり、また、原告が被告乙川の身辺調査を依頼し、本件一ないし三調査報告書を和解期日に提出したことは弁護活動として正当なものであるから、被告丙沢が第一事件の口頭弁論期日において本件準備書面を陳述し、第二事件において右準備書面を書証として提出し、本件第二事件を被告乙川の訴訟代理人として提起したことをもって、原告が被告丙沢を通常の弁護士とかなり異なった弁護士であるという意味で「弁護士として特異である」旨述べ、その原因として「当時丙沢が弁護士になって四、五年であった」旨述べたとしても何ら被告丙沢の名誉を毀損するものではなく、被告丙沢を侮辱するものとはいえない。

9  以上によれば、被告丙沢の反訴請求は理由がない。

(裁判官内田計一)

別紙調査報告書〈省略〉

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